職人の国ドイツに生まれた、職人魂頑固一徹、頼れる工具といったらHAZET。
HAZET。
創業はなんと1868年。職人の国ドイツの職人の町ゾーリンゲン(刃物で有名ですね)の近郊都市レムジャイドで操業を開始。
ドイツといえば自動車産業が有名ですが、その自動車産業の発展とともに成長した企業です。ハンドツールの本格生産は1928年から。1950年にはすでにフォルクスワーゲン、メルセデス、オペルといったドイツの主要自動車会社に自動車整備用ツールの供給を開始し、現在はポルシェのモータースポーツサポーターとして欧州では有数のツールショップの地位を確立しています。
HAZETといえば、熱烈なファンも多いあの「渋い梨地」がチャームポイント。オイルに濡れた手でも滑りにくく使い勝手を最優先したあくまでも基本に忠実なツールですが、細かく見るとそのこだわりを見つけることができます。
特徴は、一言でいえば「頑固一徹職人魂」。
今回ご紹介するコンビネーションレンチはソケットレンチとともにHAZETを象徴する工具です。職人ならではの「わりきり」も垣間見えますが、機能をスポイルすることは全くありません。私はHAZETで揃えられた工具箱を見ると感動します。
メガネ部の特徴はなんといってもこの肉の薄さ!
メガネ部はいろいろな意味でHAZETの特徴が発揮されてる箇所。
ご覧ください、この肉の薄さ!一番肉の薄い、つまりナット山の溝部分(わかりにくいな)の厚みはなんと1.30mmしかありません。
ええっ、10㎜メガネといえどそんな薄さで壊れないの?そう、この薄さで壊れないんです。いい加減なメーカーのコンビネーション・メガネでこの肉の薄さだったら不安になってしまうところですがそこは伝統のHAZET、もちろん延長パイプを突っ込んで体重をかけて回すような非常識なことをすれば話は別ですが(こんなことをしたらボルトが壊れると思われる)通常の操作であればHAZETが壊れるわけがありません。
ベンチマークのネプロス、スナップオンと比較してみます。
左からスナップオン、HAZET、ネプロス。
どうですこの薄さ。あんなにスマートに見えたネプロスが野暮ったく見えてしまう・・・
座繰りはわずかについています。スナップオンが一番大きい座繰りが入っており、ちなみに筆者イチオシのネプロスは座繰りなし。
横から見ると・・・
肉が薄い分、厚みは少々厚め。といってもネプロスよりはわすかに厚い程度、スナップオンよりは薄い。
数値でいえば
- スナップオン:7.3mm
- HAZET:8.95mm
- ネプロス:6.4mm
といった感じ。このあたり、HAZETの設計思想がよく表れていると思います。入り組んだ部分のボルト・ナットを回すために、HAZETは厚みを犠牲にして幅の細さを優先したというわけですね。さすが第二次世界大戦中にすでにインジェクションとエンジン自動制御装置を開発していたドイツ!精密機械向け、というところでしょうか。
HAZETの割り切りが見えるのがその仕上げ。特にメガネ部は顕著です。
お分かりになりますでしょうか。異常なまでに光る鏡面仕上げのネプロスとは比較にならないこのグラインダー痕・・・。
バレル研磨はされているようですが、その目的は恐らくバリ取りであり、表面仕上げではない・・・のでしょう。梨地が鋳型の表面の仕上げで付けられるのか、はたまた放電加工などの仕上げをしているのかは存じ上げませんが、必要以上にきれいに仕上げてもそれが工具の価値に何の関係があるんじゃ!という頑固な職人魂を感じます(?)。
なお、ネック角は一般的な15度。スナップオンにように柄を曲げているのではなく、ネプロスのようにネック角を付けた状態で鋳込まれています。
ここもコダワリ、ですね。私は大好きな形状です。
スリムさよりも強度優先のオープンエンド。
なぜかここだけは光ってるオープンエンド(笑)。食いつきのために角を立たせたか、面への密着度を優先したのでしょうか?
形状的には薄さの目立つメガネ部と異なり、強度優先の形状です。比較してみると・・・
先ほど同様、左からスナップオン、HAZET、ネプロス。
爪の幅もさることながら、根っこの爪基部が大き目であることがわかります。特に力のかかる短爪側は顕著。こだわってます。ちなみにご覧の通り群を抜いてスマートなのはネプロスです。
このように「パッと見、同じ」に見えるコンビネーションも、各メーカーの思想により結構違いがあるんです。
意外にも、最薄の握りはもちろん梨地仕上げ。
握りはこれぞHAZETの梨地仕上げ。メーカーロゴの深い刻印が目を引きます。
この粗い梨地と深い刻印が、オイルにまみれた手でもしっかりとグリップできる効果を生み出しています。
- VANADIUM
- GERMANY
の文字も誇らしげ。ドイツ統一前はWESTって書いてあったんでしょうか?
自己主張の強いデザインです。実際、フルセットでこいつを工具箱に入れておけばそれだけで職人感を演出できます。ホントです。
幅は9.7mmとスナップオンと同じ。厚みは実はびっくりするほど薄く、今回比較した10種類のコンビネーション中群を抜いて薄い3.45mmしかありません。
HAZET | 3.45mm |
---|---|
TONE | 3.7mm |
スナップオン | 3.7mm |
ネプロス | 3.85mm |
Deen | 3.9mm |
KTC | 3.95mm |
SIGNET | 4mm |
ダイソー100円工具 | 4.2mm |
アストロ | 4.4mm |
Ware | 5.7mm |
ギアレンチであるWareは別としても、群を抜いて薄いことがわかります。それでいて角は絶妙に丸く仕上げてあるため、手への食い込みはありません。
また、この薄さは軽量化に貢献しています。実際、手に取るとわかりますが極めて軽く、取り回しが容易なのです。
総論として、価格と性能のバランスは最高クラス。それでいてステータスも十分!
職人こだわりの形状を見せるHAZET。この小さなコンビネーションレンチの形状のどこをとっても、「いい加減に」「なりゆきで」作られた箇所は見受けられません。
そう、ガッツリ残されたグラインダー痕すら、あえての主張が見えます!(ホントか?)でも、そういいたくなるくらいの「渋い工具」なんです。
そして特筆すべきは価格設定。実売価格は1,500円前後、これは安い!(工具ってホントに10年20年使えるんです、それを考えたら・・・)
スナップオンの1/3、ネプロスの1/2.5。それでいてスナやネプと比較しても恥ずかしくないブランド、ステータスがあります。ステータスなんてかんけーねーじゃん、といえばもちろんそうなんですが工具ってそういう側面もありますよね?ね?
似たような工具は・・・スタビレーがやや似てるかな?。でも、その伝統を含めればまさに文字通り「オンリーワン」の工具がHAZETです。
- 工具箱を見てニヤニヤしたいときもある
- 工具箱を見られて、おお!と言われたい気も少しある
- もちろんガンガン使い倒したい
というような、工具マニア特性のある方はご一考の価値アリ!です。
その価格は?10㎜コンビネーションレンチの場合。
使ってみると・・・
(執筆中です、お待ちください)
お勧め度:梨地仕上げにこだわるなら一択!ツウ向け?
特徴的に目を引く粗い梨地と深い刻印。こだわりが詰まった形状とバランスの良い価格。そして見られても恥ずかしくないステータス。
工具に少しでもこだわりがあるなら、こだわりを持ちたいなら。大事にしまっておく工具ではなく、実戦でガンガン使い倒したいヘビーユーザーなら。
舶来工具としてはリーズナブルなハゼット、かなりお勧めです。こだわるあなたは、ぜひ。
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ギアレンチもあります。美しい梨地はもちろん健在、ギアレンチが好きな方ならばじゅうぶんメインウエポンとして活躍できるはず!。
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ハゼットっぽい、渋い逸品。これ、カッコいいですねえ。街乗りならライディンググローブにも使えるかな?
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これも根強いファンが多い、首振りラチェットハンドル。一つ持ってると捗りそうです。