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100円ショップのコンビネーションはいかなるものか?ダイソー、生産メーカー不明。

 

ダイソー。

 

工具メーカーではありません、皆さんご存知100円ショップ。

 

一昔前の100円ショップと違って、ラインナップも品質も向上しているようです。その100円ショップの勇といえばダイソー。運営企業は「株式会社大創産業」、店名は日本語だったんですね。国内に約3,000店舗、国外は26か国2,000店舗近く展開してるそうです。

 

ダイソーはその巨大な店舗による販売力をバックに、「大量低価格購入」を行うことで品質の確保を行っています。特定のお抱え工場やメーカーを持っておらず、常にその製造元は変化する可能性がある、はず。

 

したがって今回紹介するコンビネーションレンチも、来年には異なる製品になっているかもしれません。

 

このダイソーコンビネーション、表を眺めてもひっくり返して裏を見ても、その製造メーカーを示す手がかりが全くありません。刻印されているのは「DROP FORGED」という文字と、サイズ表示のみ。


DROP FORGED とは

DROP FORGED。

 

日本語に訳せば「落とし鍛造」の意。

 

工具に限らず金属の塊を作る方法は

  • 鋳造
  • 鍛造

の二通りに分かれます。

 

鋳造

 

材料である鉄、アルミ合金などをるつぼに入れて熱してとかし、型に流し込んでから冷やして固める加工方法です。

 

身近なところではお寺の鐘(あんまり身近じゃないか)、エンジンのシリンダーヘッド・シリンダー・クランクケース、ブレーキキャリパーなんかがそれで作られています。特徴としては複雑な形状の加工性が高いことで、型を工夫することで3次元加工品を容易に製造することができます。

 

シリンダーヘッドのポートなんて、どうやって作ってんだろって感じですよね。

 

ただ、液体化した材料を流し込みますからス(気泡が残ったもの)などが内部に残りやすいというデメリットもあります。また鋳造に使える材料も限られており、比較的低強度の場合が多いのです。

 

鍛造

 

材料である鉄などを叩いて叩いて変形させる加工方法です。日本刀など本当にハンマーで叩いて加工する方法もありますし、型を用意して間に鉄を挟み込んですさまじい圧力でガキン!とプレスして変形させる方法もあります。

 

身近なところでは工具、まさにコンビネーションレンチ(だけじゃないけど)は鍛造製品です。

 

材料を熱してから鍛造する方法を「熱間鍛造」、冷たいまま鍛造する方法を「冷間鍛造」といいます。

  • 鋳造のようにスが残らない(鍛造過程で押しつぶされる)
  • 材料組織が緻密化する

などで強度が必要な加工品に使用されます、つまりハンドツールに最適なんです。

 

ダイソー工具は鍛造品だ!

 

ということで、ダイソー工具は見事に鍛造品です!ネプロスと一緒だ!

 

・・・は言い過ぎだとしても、採用している製法は(記載を信じるならば)工具としては適切な加工方法。ただ材質は不明ですが。

 

それでは細部を見てみましょうか。

メガネ部。意外にもキチンとしてる・・・。

 

ご覧ください、意外にもちゃんとしてます。

 

無様なバリはなし。きちんとバレル研磨されてるようです、ちょっとバレル研磨掛け過ぎでかなり角がダレてますが。

 

ナットへのアプローチ性を高める面取りもキチンと入っていますし、キツすぎるバレル研磨のせいなのかそういう設計なのか、いまどきの曲面を生かした花形の12ポイント仕様。面でナットをとらえるため傷がつかない・・・はず。

 

そして表面処理も美しく、とてもコイツが100円工具とは思えません。

 

ただ(恐らく中国のおばちゃんの作業と推察されますが)バレル研磨前のグラインダー処理が悪く、柄の表面がうねっています。まあうねっていても機能には影響はありません。

 

じゅうぶん工具として及第点のメガネ部といえます。


オープンエンド部も意外と高精度。

 

これまた意外にも、オープンエンドもよくできています。

 

調査する前は、

 

「ほら、こんなにガタガタなんですよ~。やっぱり工具はある程度の価格が必要なんです」

 

と書こうと思っていたのですが、開口部の幅は10.35mm。

 

スナップオン、ネプロスハゼットがそろって10.30mmなのと比較すると僅かに広いですが、実際にナットに合わせてみても「気分が悪くなる」ほどには広くありません。

 

じゅうぶん、使用に耐えうる精度です。いずれにせよオープンエンド部は本締めをするわけではなく、早回しに使うわけですからこの程度の精度が出ていれば合格でしょう。

 

形状を比較してみると・・・

 

 

左からネプロス、ダイソー、ベンチマークとしてシグネット

 

恐らくネプロス、ではなくKTCあたりを参考に作られているのではと推察します。ネプロスとKTCは形状そっくりですし。

 

うん、意外といいじゃん!となるのですが惜しいのはメッキの強度。

 

この比較サイトではあえてすべてのコンビネーションをひとまとめにがさっと保管して、コンビネーションレンチ同士がぶつかり合う(つまり普通の工具箱と同じ)状態にしているんですがあっさりと傷がついたのはダイソーだけ。

 

オープンエンド部の先端に細かい傷がかなり入っています。まあ、価格を考えれば仕方ないか。


気になるのは、長さ。

 

というように意外といけるんちゃう?というダイソー100円コンビネーションですが、一番の問題は長さです。

 

やたらと短いんだ!100円に収めるために材料を減らしたのか?

 

一般的な、たとえばKCTのコンビネーションは150mm。それに対しダイソーコンビネーションは120mmしかありません。

 

所詮、10mmナットやボルトですからそれほどの高トルクは必要ないんですが(固着したボルトはどーするの、というご意見もあるかもしれませんが)、それでも120㎜は「機械いじり」には短すぎると思われます。

 

ちなみにDeenは170mmあります、この長さ、つまり「他よりちょっと長い」を採用したことについて、私はDeenを評価しています。


総論として、メインウエポン(常用工具)にはちと辛い。が、こんな工具が欲しいときもある。

恐らく強度もKTCなどには劣るはず。メッキも弱い。

 

いわゆる「日常的にガンガン使い倒す」人にとっては、当然辛い工具です。そもそもサイズも限定されている(大きなサイズがない)わけで、このダイソーコンビネーションで工具箱の中身を揃える、なんてことはできないんです。

 

その意外にも正確な形状・精度がありますから、一本手元に持っていてもいいかもしれません。

 

作業上どうしてもラフに工具を扱わないといけないことがありますよね。

 

工具を削ってでもそのボルトにアプローチしないといけないとか。工具ぶっ壊す覚悟で挑まなきゃいけない作業とか。そんな時、なんたって100円ですから躊躇なくコイツ、ダイソーコンビネーションを手に取ることができるはずです!

 

それくらいでしょうか。

 

あとは息子さんへのプレゼントとかね。

その価格は?10㎜コンビネーションレンチの場合。

実売価格 100円

 

間違いなく、日本で入手できる一番安いコンビネーションです。

使ってみると・・・

(執筆中です、お待ちください)

お勧め度:まあ、1本持っていても悪くない。持っていなくても悪くない。

意外にもまともな形状と精度。やや劣る表面仕上げとメッキ処理。恐らく劣る強度。

 

まともな機械整備には到底使う気にはなれませんが(100円とは言わないが、じゅうぶんリーズナブルでもっとまともな工具があるんですもの)、使えないというほどには悪くない。

 

  • 小学生が初めて工具を欲しがったら、これを渡す
  • ぶっ壊し覚悟のエマージェンシー作業

 

には、使えると思います。とにかく、ボルト・ナットは普通に回せます。

 

どうしても辛い言い方しかできないんですが、ホントよくできています。ちょっと前の100円工具は「使えない」工具だったんです。メガネ部は中心に穴が開いてないし、スパナはガバガバで舐めまくるし、バリが残ったままメッキされていて怪我しそうだったり。

 

素晴らしい進化をしています、ダイソー企画関係者には頭が下がります。

 

でも、アストロやシグネットなど、100円とは言わないが500円で購入できるツールがある以上、あえて我々のような機械いじりマニアがダイソーを選択する理由は、残念ながらありません。

購入はこちらから。

ダイソーのお店でどうぞ!

 

でも、もう少しダイソー工具を研究してみようと思います。ハイ。

 

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