ドイツらしからぬ流麗なデザイン。手への馴染み方は文字通り「持てばわかる」「持たにゃわからない」、STAHLWILLE。
STAHLWILLE。
歴史は古く、1862年創業。特徴はといえば、「持てばわかる」手へのなじみやすさ。
「I字断面」を持ち、かつ美しい適度なアールで構成された特徴的なグリップは、一度手にしたら忘れられない感触、といっても大げさではないでしょう。人間工学のたまものか、それとも長く深い伝統によるものか。
総合工具メーカーとして5,000近いアイテムを持つメーカーであり、その知名度・品質はHAZETとともにドイツメーカーの双璧と言えます。
そんなスタビレーのロゴはこれ。
そう、コンビネーションレンチはスタビレーの代表的な工具。
お分かりでしょうか、ロゴの背景のコンビネーションレンチ、オープンエンド部がちょいと垂れてる。
そう、この形状こそが、スタビレーのスタビレーたる所以(ゆえん)、でございます。
ということでコンビネーションに力を入れているスタビレー、実は長さで13シリーズ、14シリーズ、16シリーズと3種類のラインナップがございます。この章では個人的にお気に入りの14シリーズ、真ん中の長さのヤツをご紹介。
オープンエンド部の「垂れ下がり」。
この画像一枚を見ても、スタビレーらしさがあふれ出ています(?)。
ロゴでも確認できる垂れ下がり。この角度は「力が集中する点をずらし、オープンエンド部の口が開くことを防止する」目的で付けられているとのこと。
単体でみてもわかりにくいので、比較してみましょう。比較対象はもう一つのドイツ工具の雄、HAZET。
いうまでもなく、左がスタビレー。右がハゼット。
柄の中心線と、オープンエンド部の中心線の交点の位置が違うのがわかります。コレはどちらがいい、というわけではなく設計思想の違い。あくまでもボルト・ナットに近いところに交点を持ってくるハゼット、若干、柄側に交点をずらしたスタビレー。
どちらかといえば、使った印象では前述の
- オープンエンド部の口が開くことを防止する
よりは、力を掛けた際にまるで「柄がしなったかのような」独特の手ごたえを演出してるように、私は思えます。よく言われる「スタビレーは柔らかい」の真相はコレなんじゃないかと思うんですよね・・・
実際ハゼットより材質は柔らかい(というかハゼットが堅すぎる)らしいのですが、バイク整備ごときでハンドツールが曲がるような使い方、しないですよね。そういう時はインパクトを使いましょう。
高さで強度を確保する、メガネ部。
そしてメガネ部。
こちらも独特の設計思想で作られています。形状こそはオーソドックス、綺麗に取られた面取りが目立ちます。比較的細身ではありますがメガネ部の肉の薄さNo.1のハゼットよりは、なんといいますか野暮ったいというかしっかりとした造り。
折角ですからこちらもハゼットと比較しましょう。
念のため、左がスタビレー。右がハゼット。
ハゼットは別記事で書いた通り、メガネ部はぶっちぎりの肉の薄さです。その全幅はなんと14.45mmしかありません。ちなみに、標準品のKTCは16.0mmもあります。
スタビレーは15.25mm。決して太いわけではありませんが、流石にハゼットにはかないません。
そして厚み。ハゼットは8.95mmと、その薄さの代償としてかなり厚め。ちなみに、標準品のKTCは6.95mmです。対してスタビレーも8.95mm。このあたりドイツ工具のなにか共通点があるのでしょうか?
また、面白いのが立ち上がり。スタビレーは深めのオフセットが付いています。そのかわりに、立ち上がり角度は10度。ちなみにスタビレー他、一般のコンビネーションは15度。オフセットの分、角度を減らしてるって感じですね。
グラインダー痕も、スタビレーのほうが少ないですね。ハゼットが割り切りすぎとも言いますが・・・
当然、平らな面に存在するボルト・ナットを回すときはスタビレーのほうが有利です。とはいえ、ハゼット他メーカーも、メガネレンチは深いオフセットのアイテムを用意しています。
とっても握りやすいI型の柄。上品な梨地仕上げ。
握りも人間工学的、さすがスタビレー。
特徴的なI型・・・と表現するのがそっけなさ過ぎて申し訳ないくらい、官能的な局面で構成されています。その握り心地は金属とは思えない温かみを感じるくらい。やたら強調しちゃってますが、実はワタシ(筆者)がメインで使用しているコンビネーションはスタビレーだったりします。
梨地はハゼットよりは浅いように感じられます。ちなみに写真のスタビレーは私の工具箱から引っ張り出してきたもので、中古で購入してからさらに15年使い倒しているものです。ね、工具ってちょっと奮発しても十分元が取れちゃうんです。
自己主張の強いデザインのハゼット、柔らかな温かみのあるスタビレー。
どちらも甲乙付けがたい柄です、どちらを選びますか?ちなみに9㎜と、今回比較したコンビネーション中、最も細い柄となります。ハゼットはスナップオンと同じ、9.7mm。
この細さが何に影響するか・・・そう、軽さです。スタビレーは形状だけではなく、軽さでも取り回しやすさを実現しています。
んでもって、スタビレー(14シリーズ)はハゼットより、ちと長い。
そして見逃せないスタビレーの特徴、ちょい長い。
ハゼットと比較して12㎜ほど長いんです。この長さがひじょーに使いやすい。
Deenの章でも書きましたが、ハンドツールはこの「ちょい長め」が、具合がよろしいです。握りの位置を変えることで、デリケートな締め付けトルクをコントロールすることができます。
まあ、大抵の工具メーカーはそれ用に「ロングメガネ」なんてものをラインナップしているわけですが、我々アマチュアメカニックはそれらを揃えることはコスト的にもスペース的にも辛いですよね。
私のようなサーキット派ライダーは、持ち込む工具もできるだけ減らしてツールケースを軽くしたいわけでして、その意味でも「ちょい長」のハンドツールは好ましいわけです。
この長さは見逃せませんぜ。
総論として、ツウ好み、そしてワタシ好みのイチオシツールです!
頑固な職人のこだわりで構成されたHAZETと比較して・・・
- 対照的にも見えます。仕上げも割り切られていて荒っぽく、あくまでも合理的な形状のハゼット。美しく曲面で構成された、温かみすら感じるスタビレー。
- 似ているようにも見えます。それぞれ、徹底的にこだわりぬいた各部の設計。
もうこれは好みの世界としかいいようがありません、があえて私はスタビレーを押します。ドイツ工具でありながら、ドイツらしくない。そして、HAZETほどユーザーがいない(!)。やっぱり趣味の世界ですから、珍しさってのもアソビ心としてはあっていいんじゃないでしょうか。
もちろん見てくれのみの工具ではありません。ツールショップで一度手に取ってみれば、できればボルトを締め付けてみればすぐ理解できると思います。
価格は若干高め。3,000円弱といったトコロ、これは流通量の少なさが原因かな?ハゼットの倍くらいしちゃいます。ココが難点でしょうか。
- 他人とは違う、ちょいマニアックなアイテムが好み
- 機械の美しさを重視する
- もちろんガンガン使い倒したい
というような、こだわり派のあなたにはお勧め。見てよい握ってよい、本当に素敵な工具です。
その価格は?10㎜コンビネーションレンチの場合。
使ってみると・・・
(執筆中です、お待ちください)
お勧め度:ある意味ハゼットよりもマニア向け。とりあえず握ってみよ!
ドイツ工具らしい梨地と理詰めの構成。ドイツ工具らしからぬ美しさ。
そして、満点のレア度。スナップオンよりもネプロスよりも安価ですが、レア度は負けません!
一度惚れてしまうと抜けられないスタビレー沼。マニアだったら、チャレンジする価値あり!です。
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STAHLWILLE コンビネーションレンチセット(14シリーズ)
8mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、17mmの使いやすいエントリーセット。メタルケース付き。この入り組みがあなたの工具箱にあったら・・・ワクワクしませんか?いい工具は気分までハイにしてくれます。
STAHLWILLE シールドラチェットハンドル
スタビレーでコンビネーションと並んで高い評価を得ているのが、ラチェットハンドル。カンパニーカラーのグリーンが美しいラチェットハンドルも、工具箱に映えます(インスタ映え?)
STAHLWILLE ファストラッチ
スタビレーの変わり種がコレ、ファストラッチ。ピンセットのような構造です、間にナットを挟むんで握ると締め付けできる、緩めると空回りして戻せる・・・らしいです。普通のナットやボルト、というよりもスロットルワイヤーのキャブ側遊び調整難かに便利かもしれません。